絵本の読み聞かせの効果
子育てに絵本の読み聞かせが良いと聞いたけど、効果があるのかな?
小学校での学力との関係は?
絵本の読み聞かせはいつから始めたら良いのかしら?
上手に読めないから、読み聞かせのコツを教えてほしい。
おすすめの絵本があれば教えてほしい。
本が好きな子どもに育ってほしい。

などなど、お母さんの疑問や悩みはたくさんだと思います。
ここでは、東京大学大学院教育学研究科の記事などを参考に、疑問や悩みにお答えしていきます。

絵本の読み聞かせの学力面での効果

学力・語彙力の向上

文科省と国立教育政策研究所の全国学力・学習状況調査をもとにした 元お茶の水女子大学 内田伸子教授(現・十文字学園女子大学教授)の「幼児期の読み書き能力や語彙能力と家庭環境との関係」の研究結果からわかったことです。

成績が良い‥‥ 子どもが小さい頃、絵本の読み聞かせをした親の子ども
親の学歴や子どもへの乳幼児期の教育投資と「しつけ」の方法で
3~4歳‥‥‥‥「文字の読み書き」に差が出る       
5歳‥‥‥‥‥ 「文字の読み書き」に差が出ない
親の子どもへの養育態度で 
3~4歳‥‥‥‥「語彙力」に差が出る      
5歳‥‥‥‥‥ 「語彙力」の差が続く

乳幼児期からの読み聞かせの効果である語彙力の差が、大きくなってからも続いていることがわかります。
絵本の読み聞かせが豊かな語彙を増やし、思考力と想像力を育みます。
語彙力が豊富であれば、友人とのコミュニケーションがスムーズにいくので自分の気持ちを言葉で表すことができ、ストレスが少なくなると言われています。

勉強面では、この語彙力が豊かになれば国語力の向上につながり、他学科の成績アップにもつながるため、語彙力を豊かにする絵本の読み聞かせを続けていくことは、教育的効果があるといえます。
また、絵本の読み聞かせを続けていくと長いお話も聞くことができるようになり、小学校に入学しても授業を聞く力が身に付きます。

IQ の向上

大人と子どもの双方がスキンシップをしながら、穏やかな気持ちで読み聞かせをすることで分泌される「オキシトシン」というホルモンは、子どものIQを高めると言われています。

集中力を高める

絵本を読んでいる間、子どもは大人のお話を聞いています。
最初は聞いていないように思われても、子どもは少しずつ集中して聞くことができるようになるので、幼いころから読み聞かせを続けていくと、学校での授業を聞く力が育ちます。、

言語能力の向上

絵本の読み聞かせを聞くことで日常使用しない言葉に子どもは触れていきますので、語彙の量と共に言葉の使い方なども覚えていきます。

想像力・知的好奇心を育む

子どもに好きな絵本を読み聞かせると、物語のストーリーを考えることで想像力や発想力、知的好奇心が向上し、学習意欲も高まります。
また、物語の内容によっては優しい心や思いやりの心が育っていきます。

繰り返し読みで読書年齢が上がり、言葉の習得が速くなる

イギリス サセックス大学 Jessica Host 博士の研究結果から、以下のことがわかっています。
*繰り返し読みが効果あり
好きな本を何度も何度も子どもは読みたがりますが、繰り返し学習で子どもは新しいことをより速く学んでいるので、幼児期の子どもには繰り返しの読み聞かせが重要です。
*読書年齢があがる
子どもに30分の読み聞かせを5か月続けると、読書年齢が2年引きあがります。

読み聞かせの心理面での効果

親子の絆を強める

日本大学大学院総合科学研究科 泰羅雅登教授の研究で、読み聞かせの効果が実証されました。
読み聞かせをしている時の親子の脳を調べる実験で、初めて読み聞かせの効果が証明されました。

以下、引用

この実験の結果、読み聞かせ中に読み手である母親の脳では前頭前野が活発に働き、聞き手である子どもの脳では大脳辺縁系が活発に働いていることがわかりました。
前頭前野は、思考や創造力、コミュニケーション、感情のコントロールといった機能を司り、大脳辺縁系は喜怒哀楽を生み出し、その感情に基づいて基本的な行動を決めている部分です。

泰羅教授は大脳辺縁系を「心の脳」と呼び、「健やかに育っていくためには大脳辺縁系がよい働きかけを受け、情動が豊かになることが大切」と述べ、「子どもは読み聞かせを通じて、豊かな感情、情動がわき上がっているのだろう。脳は使うことで発達する。読み聞かせは、結果として子どもの豊かな感情を養い、『心の脳』が育つために役立っているのだろう」と分析しています。
 一方、母親は一人で音読をしているときよりも子どもを相手に読んでいるときの方が前頭前野の活動がより活発で、特にコミュニケーションをとっているときによく活動する部分が働いていることが分かりました。泰羅教授は、「子どもも大人も、ともに楽しめることが読み聞かせの良さ。親が子どもの表情を見ながら、そして気持ちを考えながら話す言葉には、大きな力があるのだと思う。読み聞かせは親子の絆をつくる良い機会となるでしょう」とアドバイスしています。

読み聞かせの時の穏やかな感情と共に「オキシトシン(別名 愛情ホルモン)」というホルモンが分泌されますが、このホルモンは子どものIQを高めるだけでなく、スキンシップをしている大人と子ども双方の心を癒します。
その結果、愛情と信頼が深まることで幸せな感情で満たされると同時に、子どもの感情の安定が図られます。

自己肯定感を育む

絵本を通して人生がさまざまであることを知り、主人公になった自分を想像して達成感や成功体験を味わい、生きる道をたくさんみつけることができます。
子どもの住む世界は狭く、絵本の経験が「自分の暮らす所だけが世界じゃない」という「考えの転換」になって子どもの閉塞感を破り、「くじけない心」が育まれることにつながります。
これが「自己肯定感」で、生きていく上で必要な『自分を認める力』を得ることになります。

読み聞かせが奇跡を起こした実話

「クシュラの奇跡140冊の絵本との日々」 という本になっているのでご存知の方も多いかと思いますが、次のような内容です。

著者ドロシー バトラー(著)
Dorothy Butler(原著)
百々 佑利子(翻訳)
出版社のら書店
発行日2006/3/20
評価★4.6

ニュージーランドに生まれたクシュラは染色体異常などの重度の先天性障害を持っており、視力も張力もとても弱く、肉体的にも精神的にも成長が遅れていました。
しかし、クシュラの伸びる力を諦めなかった両親は、眠っている時以外はクシュラを抱っこし、見えない、そして聞こえないクシュラに話しかけたのです。
生後4か月の時、クシュラが絵本に反応したのをきっかけに、両親は毎日クシュラに読み聞かせを始めました。
長い時は 1 日に 10 時間も、見えない、聞こえないクシュラに絵本を読み聞かせてやり、最終的には 140 冊の絵本を繰り返し読んで聞かせました。
合計 140 冊の絵本を両親がクシュラに繰り返し繰り返し読んでやった結果、3 歳でクシュラの知的成長は平均をはるかに超えていたのです。
もちろん、クシュラは自分で絵本も読めるようになっていたのです。

このように、重度の障害を持って生まれたにも関わらず平均以上の知的発達を遂げ得たのは、クシュラが絵本を通して、両親の愛情と共に豊富な言葉と絵に触れたからだと推測されています。
読み聞かせの絶大な効果や意義が示されている実話です。

絵本の読み聞かせのポイント(子どもの「語彙力」を伸ばすコツ)

元お茶の水女子大学 内田伸子教授(現・十文字学園女子大学教授)による読み聞かせのポイントです。

親が子どもへ行うしつけの型は、次の 3 つにわけられます。
強制型‥‥‥‥‥言いつけに絶対従わせ、何度も指示し、言い聞かせる
自己犠牲型‥‥‥子ども中心で親が犠牲となる教育
共有型‥‥‥‥‥一緒に楽しい時間を持ち、子どもの喜ぶことを考え、話しかける

読み聞かせの語彙力は、所得が低くても「共有型しつけ」の親を持つ子どもの方が伸びます。

共有型の読み聞かせ

  • 膝の上に抱っこしスキンシップをしながらゆったりとした気持ちで行う
  • 途中で遊びに行っても、怒らず読み続ける
  • 読み終わっていないページをめくっても叱らず、絵を見せるだけで十分と考える
  • 繰り返し読んであげる(子どもが望むなら、同じ絵本を繰り返し読んであげる。お決まりの場面、言葉に子どもは安心し、言葉も覚えていく)
  • ページを省略しない(大人の都合ではなく、子どもに合わせて読んであげる)
  • 大人も子どもと一緒に読み聞かせを楽しむ
  • 読んでいる途中で感想を聞いたり、質問をしない
  • オーバーアクションをしない(過度な感情を込めた読み方やアクションに子どもの興味が行き、絵本を楽しむよりも、読む大人の表情、声、動きが面白い絵本になってしまう。)
  • 感情表現をしない(悲しそうに読むと、読み手の感情に支配され、子どもの想像が働かなくなる)
  • CDやビデオにまかせない(スキンシップを図って読み聞かせをするから効果がある)
  • テレビやパソコン、スマホの電源は消す(音や動きのあるものに子どもの興味は行くので、効果が半減する)
  • 読み終わったら余韻を楽しみ、感想を聞かない

年齢別 おすすめの絵本

0歳赤ちゃんにおすすめの絵本

生後間もない赤ちゃんは、脳のしわも少なくいろいろなことを吸収している状態なので、たくさんの刺激を受けて発達しています。

視力は生後半年位までは 0.05 位でぼんやりとしか見えませんが、色は、赤・青・黄・緑・白・黒が認識できます。
耳は聞こえていますので、聞き取りやすいように、ゆっくりとわかりやすく話しかけます。
耳からの情報が多いほど脳が発達することがわかっているので、語り掛けや読み聞かせが大切です。

8か月以降はより多くの色を認識できるようになり、視力は 0.1 程度です。
さらに、立体がわかるようになり、違う質感が見わけられます。
物をつかむこともできるようになり、触ってツルツルやザラザラなどの感触も実感できるようになります。
耳から聞こえる音を言葉として認識できるようになり、言葉に興味も出てきます。

0歳の赤ちゃんへのおすすめ絵本は、こちらで詳しくご紹介しています。

1歳児におすすめの絵本

1歳頃の視力は0.2~0.25くらいになり、人の顔や物の形は認識できるようになりますが、輪郭ははっきりとしていません。
言葉は意味がわかって使うようになりしっかりしてきますが、母親から離れないようなこともあり、自立と依存を繰り返しながら、様々な感情も育っていきます。
スプーンやお箸を持って自分で食べたがりますが、他方、そのスプーンやお箸をテーブルから落としたりするのは、「こうするとこうなる」を学んでいるので、「落とすと落ちる」を実行しているのです。
また、歯磨きや手洗いなどの生活習慣を身に付けていく時期でもあります。

絵本を読んでやっても座って聞いていないこともありますが、絵本が嫌いなのではなく、じっとしていられないからの動きなのです。
一時のことなので、お子様があちこち動き回っても、ページを次々とめくっても、叱らずに続んであげてください。

語彙も急激に増え、1歳8ヵ月頃に「語彙爆発」という現象が見られます。
語彙の平均獲得数5~6語が25語に増えるので、新しい言葉の載った絵本を読んであげることをおすすめします。

1歳におすすめの絵本は、こちらで詳しくご紹介しています。

2~3歳児におすすめの絵本

「見る」という自然の訓練で発達する視力は、2歳で0.5~0.6、3歳で0.8位になっています。

2歳になると強い自己主張をし始め、親を泣かせるイヤイヤ期がやってきます。
このイヤイヤ期は、脳の中の前頭前野がまだ発達していないので感情を抑えることがむずかしく、自分の感情をコントロールする方法を学習していることから起こるのです。
反抗してイヤイヤしているのではなく、自分で出来ないからかんしゃくを起こしているだけなので、逆に、思うようにできると達成感で誇らしくなりを繰り返し、少しずつ成長していきます。

3歳になってもイヤイヤが続いているお子様も多く、「悪魔の 3 歳児」と呼ばれますが、自我の発達で自己主張をしているのです。
この時期は自分以外の人の気持ちも理解できるようになっており、感受性も豊かになるので、自我を認めながらも、人とのかかわりの中で必要になるコミュニケーションや協調などの社会性を、読み聞かせの絵本で導いてあげましょう。

2歳前に訪れる「語彙爆発」で獲得する言葉の数が増えていますので、今までと違う絵本を読んであげることをおすすめします。

3 歳になると好奇心が強くなり、保護者の方を質問攻めにするお子様も多くなりますが、丁寧に答えてあげることでお子様は満足します。
わからない時は一緒に調べ、お子様の好奇心を上手に導いてあげると、お子様が成長する良い機会になります。

学習面では、数の概念を認識する力、身近なものの大小を比較する力、絵本のあらすじを覚えるなどの記憶力が高まります。

2歳~3歳におすすめの絵本は、こちらで詳しくご紹介しています。

4~5歳児におすすめの絵本

4歳になり、「見る」という自然の訓練で発達する視力は1.0になっています。
5歳も同じく1.0です。

興味や好奇心が強くなり、自己主張も増えますが、幼稚園や保育園の集団生活を通して、思いやりや助け合い、譲り合う気持ちも育っていきます。
この思いやりなどの心と感受性は、想像力を働かせることで相手の気持ちに共感して生まれてくるので、想像力をふくらませる経験を多く持つことが重要になってきます。
この経験は遊びや社会、人とのかかわりなので、絵本を読むことで、実際にできない経験を積むことができます。

このような心の成長に伴い、次のような「4歳の壁」と言われる変化が起こります。
*急にこだわりが強くなる
*ころころと気分が変わる
*急に怖がりになる
これは、4歳になり大脳が発達し、現在と自分しかなかった思考に過去と未来が加わったのですが、急に発達することによる変化に戸惑いを感じ、ぐずったり泣いたりするのです。
子どもは壁に当たるとお母さんのところに戻り、しっかり甘えて不安をなくします。
これを繰り返しながら、「4歳の壁」を乗り越えます。

この時期は、文字や数字に対する興味に差があるので、無理に教えようとしないことが大切です。
ただ、脳は発達していますので、読み聞かせで文字や数の概念を自然と覚えるような絵本を読んであげることが大切です。

5歳になると自立が進み、身の回りのことを一人で行い、ことの善悪もわかるようになっています。
表情から相手の喜びや悲しみなどの感情を読み取る力も上がり、相手がその感情にいたる原因を想像する力も備わりますので、相手を思いやる心を育むことに相応しい年齢と言えます。
誰かの役に立つ喜びや感動、他人の気持ちへの共感なども芽生える時期です。
ストーリー性のあるお話も理解できるようになるので、昔話や未知の世界の物語などで想像力を大きく膨らませてあげてください。
特に昔話には、先人が生きる知恵を込めた物語が多いので、是非、読み聞かせてあげてください。

また、親から注意されるより、絵本を通して学ぶ方が受け入れやすい年齢なので、交通ルールや社会生活のマナーなどを取り上げた絵本もおすすめです。

就学を前にしたこの時期は、数の概念も理解し始める年齢なので、自然に覚える絵本を選んであげてください
文字に興味のあるお子様は自分で読み始めますので、文字の大きさや一文の長さなどに注意して本を選んであげることをおすすめします。

4歳~5歳におすすめの絵本は、こちらで詳しくご紹介しています。

まとめ

子ども達は、絵本の内容ではなく、その絵本が楽しいか面白いかで判断します。
面白ければ、繰り返し繰り返し飽きずに読んでほしいと持ってきますが、子どもの気持ちを考えずに選ぶと本嫌いになることもあります。
本に書かれた内容の狙いや意図していることなどを教えるのは厳禁です。
それは、子ども自身が大きくなる過程で、自分で感じ取っていくものだからです。
内容の理解などの教育的配慮の読書を目指すのではなく、子どもが楽しむ読み聞かせをしてあげましょう。

読み聞かせはお子様の成長に欠かせないものであり、子どもとのコミュニケーションで絆も深めてくれます。
子どもの喜ぶ顔を見ながら向き合って読み聞かせをすると、お母さんの方も幸せいっぱいになります。

読み聞かせを始めるのに「もう遅い」はありません。
子どもの幸せな未来のために、読み聞かせを今日から始めましょう。

 

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